蕁麻疹の漢方治療

漢方には五行説という理論があって、アレルギーの症状は金に属する肺に関係して出ます。肺が悪いのは、その前に来る脾(現代医学の胃腸)が弱いためです。
脾が弱いと色々なアレルギーや自己免疫疾患が出ますが、脾を温めて強くすると、これらは全て治ってきます。蕁麻疹もアレルギーですので、ベースとして脾の冷えがあります。
蕁麻疹は脾の冷えに、睡眠不足が重なると起こり、ストレスや怒りで悪化します。
漢方では体全体の潤いを“血(けつ)”という字で表します。昼間体を動かして消費して減っていきますから、次の日に使えるよう夜に再生産しておく必要があります。寝ている間に脾(現代医学の胃腸)が血を再生産しているので、寝る時間が短いと、作る時間が短いということになり、血は必ず減ります。また仮にきちんと寝ていたとしても、脾が作っているので、冷たいものやぬるいものを飲食して脾が冷えて弱いとか、甘いものなどを食べて脾が重くて弱くなったりすると、血を作るスピードが落ちてしまい、これも血が減ってしまいます。
更に、血は水ですので、火であるストレスの持続やピリ辛の多食、男性だと射精のし過ぎでも乾いて減ります。
血が減ると(厳密には血管内の液体を“血”と言い、血管外の液体を“津液”と言います)、
潤いが無くなり乾いてきますが、乾くと過敏になり、小さな事を大きなストレスとして受け止め易くなり、イライラし易い、不安になり易い、怒ると止まりにくいなどの症状が出ます。
乾いているので、ストレス・怒り・ピリ辛などの火が付き易くなり、乾いたところにストレス・怒り・ピリ辛などの火が付くと、気が上に揺れながら上って風が起こります。これを内風(ないふう)と言いますが、この状態の証を“血燥生風”と呼びます。
風が起こると、風のように変化の速い発疹が出て、出たと思ったらすぐ消える、こちらに出たと思ったらあちらに移るという具合で、これが
蕁麻疹です。血や津液など、“陰”の不足によっておこるので、陰の時間帯である夜に激しく出易い傾向があります。
蕁麻疹はこういう病態生理で起こるので、治す時にはこの反対をすればよい訳です。
まず、アレルギーの本態である脾の冷えを治す為、脾を暖める薬を使いますが、同時に食べたり飲んだりするものも、全て温かいものにします。薬で温めて、飲食物で冷やすと、綱引きになって薬が効きません。反対に薬で温め、飲食物でも温めると、脾はどんどん強くなって、良くなったら今度は薬を減らしてゼロにできます。
次に、血を増やす必要があります。その為には睡眠時間を増やす必要があります。
男性で8時間半、女性は9時間寝ると、蕁麻疹は順調に治って行きます。
女性の場合、9時間寝るのは、初めだけです。蕁麻疹が出なくなったら、まず朝の抗アレルギー剤を止めて、それで大丈夫なら夜の抗アレルギー剤も止めます。その時点で、睡眠は8時間半に減らせます。それでも蕁麻疹が出なければ漢方を減らしていき、そこからは睡眠も8時間で大丈夫です。ただし、治って薬が要らなくなった後も、睡眠が7時間半より少ないのが続くと、また蕁麻疹は再発し易くなります。
エキス剤は当帰飲子を中心に、他のエキス剤を混ぜて使います。

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