潰瘍性大腸炎の漢方治療
潰瘍性大腸炎は原因不明とされて、免疫異常が病態としてあり、難病に指定されているやっかいな病気です。
一番の特徴は大腸からの出血ですが、漢方では出血させないようにするのは脾(現代医学の胃腸)の役目で、これを統血作用と言います。冷たいものやぬるいものの飲食で脾(胃腸)が冷えて弱ると、この統血作用が働かなくなり、出血が始まります。
脾の冷えが強くなると、冷えが下に沈み、熱が上に浮く虚陽上浮という状態に進みます。アトピーでは足が冷えて顔が暗紅色になりますが、これと同じことが腸管で起こると、腸管内部の表面にある粘膜は真っ赤になり、腸管の深部は冷えた状態になります。ですから、漢方的な治療は、脾を温めて統血作用を強めて出血しにくくすることを本治とし、対症療法的な標治としては、表面に浮いた熱や炎症を冷まします。そして出血を直接抑える治療も、出血中は加えておく必要があります。出血が酷い時は、煎じ薬を使いますが、軽度の場合はエキス剤を組み合わせて使用しても治療できます。脾の統血作用を高めるために人参湯や補中益気湯を使い、取りあえず止血する為には田三七末を、大腸粘膜の炎症を抑える為には青黛末を一時的に用います。脾を温める為には、足三里に自分でお灸することも非常に有効です。最も大切なのは飲食物の温度で、腸管の温度の37℃より高いもののみ飲食するようにします。常温のものですら体温より低いので避け、必ず少し熱めのものを飲食することが大切です。このようにすると、まず現代医学の薬が不要になり、漢方もかなり少ない量でコントロールできるようになります。薬がほとんど要らなくなっても、普段は熱めのものを飲食するようにしておけば、ほとんど再発しませんし、再発しても漢方のみで直ぐに治せます。