気管支喘息の漢方治療
喘息はアレルギー性疾患です。アレルギー性疾患は他にもアトピーや蕁麻疹、アレルギー性鼻炎などありますが、漢方的には脾(現代医学の胃腸)の冷えが根底にあり、脾が冷えると悪化し、脾を暖めるとどれも治っていきます。
胃腸(脾)を暖める薬を使って治しますが、薬で温めても飲食物で冷やすと、綱引きになって薬が効きません。反対に、薬で温め、飲食物でも温めると、早く治って、その後薬を減らしてゼロにできます。
気管支喘息の現代医学的な病態生理は、気道の平滑筋が痙縮して狭くなり、更に気道の炎症で痰などの気道粘液分泌物が出て内部を詰まらせ、酸素や二酸化炭素の出し入れができなくなる状態です。
漢方では体全体の潤いを“血(けつ)”という字で表します。昼間体を動かして消費して減っていきますから、次の日に使えるよう夜に再生産しておく必要があります。寝ている間に脾(現代医学の胃腸)が血を再生産しているので、寝る時間が短いと、作る時間が短いということになり、血は必ず減ります。また、冷飲食やこってりしたもので脾が弱ると、血を作るスピードが落ちて少し減りますし、血は水ですので、火であるストレスの持続やピリ辛の多食、男性だと射精のし過ぎでも乾いて減ります。
血が筋肉を潤しますので、血が不足すると、筋肉が引きつり易くなります。気管支の平滑筋が引きつって痙縮すると、気管支がきゅっと細くなって、空気が通りにくくなります。更に、横隔膜も筋肉なので、横隔膜が血の不足で硬くなると、息を吸いにくくなります。気道も乾いて、火が着き易いイメージになり、気道の炎症が治まりにくくなります。
逆に、睡眠を増やして、血を増やせば、気管支の平滑筋は痙縮しなくなりますし、横隔膜も動きが良くなり、息を吸いやすくなります。気道も潤って、炎症という火が消え易くなります。
睡眠は治療中は男性で8時間以上、女性で8時間半以上必要です。
次に、食べ物の中身を変える必要があります。甘いもの、油っこいもの、パンや麺などの小麦製品、乳製品、ドライフルーツやナッツ類は粘る性質をもっていて、これらを摂りすぎると、痰湿という粘る病理産物が溜まって来ます。痰湿が溜まると、必ず痰が増えますので、これが気道の内部を塞いで、喘息を悪化させます。
逆に、痰湿を減らせば、痰の原料が無くなって、痰は減ります。
痰湿の原料になる粘るものは、一旦止めないといけません。逆に、繊維をしっかり摂ると、繊維が痰湿を腸からこそぎ落として、便と一緒に外に出してくれます。
主食を玄米にして、葉野菜をごく少量の油を使って一番高い温度で炒めると、水分が飛ばされて5分の1のサイズになるので、生野菜の5倍の繊維が取れます。蛋白質はしっかり摂る必要がありますが、初めは粘らない魚や丸ごとの大豆、おから、納豆などにします。痰湿が減ると、舌苔が薄くて、有るか無いかくらいになり、便の臭いが気にならなくなります。その時点で、粘りにくい卵や鶏肉を増やし、それで大丈夫なら豚肉や牛肉も増やせます。肉を食べても問題なくなれば、小麦も週に2回くらいは食べられるようになります。
ピリ辛は火のイメージが強く、炎症を悪化させる上、咳を誘発しますので、トウガラシとコショウは、初めは止める必要があります。喘息が治ったら、また使えるようになります。
現代医学では、大人の喘息はコントロールできても治らず、吸入ステロイドは一生必要とされていますが、それは薬だけで治そうとして、体質を改善することをしていないからです。食事や睡眠も改善して治療すれば、きちんと治って来て、まず現代医学の薬が要らなくなり、最後は漢方薬も要らなくなります。現代医学の抗喘息薬は発作を抑える薬、漢方は発作を抑えながら根本も治す薬、食事や睡眠は根本を治す最も大切なものです。真面目にやれば、どんどん治って行きます。