アトピー性皮膚炎の漢方治療
アトピー性皮膚炎の漢方治療
アトピーはご存知のようにアレルギー性の病気ですが、他のアレルギー、例えば喘息・ジンマシン・アレルギー性鼻炎などと共通の原因があって、漢方的には胃腸(漢方用語では脾)の冷えが根本にあります。つまり、胃腸が冷えるとアレルギーや自己免疫疾患が出易くなり、胃腸を温めるとこれらは全て治っていきます。
アトピーは皮膚の病気ですが、皮膚の下の水がきちんと流れていれば、このような皮膚炎は起こりません。皮膚の下の水を流すのは、胃腸の気の力なのですが、胃腸が冷えているためにアレルギーが出易くなる上、皮膚の下の水が動かなくなる為、水が届かなければ乾いて痒くなり、水が届いても動かなくなれば後から来る水に押されて溢れジュクジュクして痒くなります。見た目は正反対でも原因は一緒で、皮膚の下の水がきちんと流れていない為に起こるのです。したがって、アトピーの治療の基本は胃腸を温めてアレルギーを治していくと同時に、皮膚の下の水の流れを良くして乾燥やジュクジュクを改善することになります。薬で胃腸を温めると同時に、食べたり飲んだりするものを全て胃腸の温度より高い37℃以上にし、薬の温める作用と飲食物の温度で治していきます。
皮膚を悪くするもう一つの要因は食べ物の性質です。甘いもの、油っこいもの、肉類、牛乳・ヨーグルト・豆乳などの乳製品、パンや麺などの小麦製品、ドライフルーツ、ナッツ類、これらは粘る性質が強く、摂りすぎると粘る要らないものが体に貯まります。これを漢方用語で痰湿と言いますが、痰湿が貯まると汗も粘って刺激の強い汗になる為、汗をかくところに痒みが集中する傾向が出ます。また汗が粘るため汗疹のように出口が詰まって、プツプツと盛り上がって凄く痒くなります。痰湿を減らせば、汗の粘りと刺激も取れて、汗をかいても痒くなくなるのですが、痰湿を抜くために必要なのは繊維です。主食を玄米にし、タンパク質は初めは粘りにくい大豆の水煮やおから、魚にしましょう。線維を摂るのに一番良いのは葉野菜です。キャベツ、モヤシ、小松菜、チンゲン菜、白ネギなどを、油は極力少なくして高温で一気に炒めると、調理時間も数分で済む上、大きさが5分の1になるので、生の野菜に比べて5倍食べられ、治るスピードも5倍になります。根野菜も悪くはないのですが、煮込むと柔らかくなって線維が少なくなる上、腹が膨れてあまり量が食べられません。葉野菜の野菜炒めを中心に、時々蒸し野菜や鍋物、根野菜の煮込みを食べると良いでしょう。
線維を摂る間は痰湿の原料になる甘いものなどは止めておく必要があります。入れながら抜こうとしても、痰湿はなかなか減りません。
この食事療法はいつまでも続ける必要はありません。痰湿が多い人は舌の苔が厚くなったり、便やおならが臭くなるので、これを目安に食事を変えていけます。舌の苔や便の臭いが目立つ間は最初の食事療法を続け、舌の苔がほとんど無くなり便の臭いも無くなったら、痰湿が減ったと考えて、肉類を少しずつ増やしていきます。まず粘りが少ない卵、鶏肉から始め、それで大丈夫なら少し粘りますが豚肉、牛肉も増やせます。普通に肉を食べても大丈夫になれば、たまにはパスタなどの麺も摂れます。白パン、乳製品、甘いものはかなり粘るので、最後に回した方が良いでしょう。
外食は線維が少ないので、痰湿は増えても減らず、痒みは悪くなっていきます。
普段は自炊で治療用の食事にして、たまに豪華で美味しい外食をし、食事にメリハリをつけて楽しく痰湿を減らすといいでしょう。外食の翌日はいつも以上に線維を摂って前日貯まった痰湿を除くようにしましょう。
睡眠時間は皮膚の修復スピードに関係します。皮膚を修復する為のエネルギーや物質を、寝ている間に再生産している為、睡眠不足だとこれらが不足して修復スピードが遅くなります。アトピーの人は現状維持の為に、女性で7時間半、男性で7時間の睡眠は必要です。治った後はこの睡眠時間でいいのですが、皮膚に問題がある間はなるべくこれより1時間は多く寝て、皮膚の修復スピードを増やしましょう。
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